暗意実現モデルに基づいた音楽分析

暗意実現モデルの基本類型を用いて、メロディ構造分析を行うシステム、メロディ生成を行うシステムを構築した。

暗意実現モデルとはEugene Namourによって提唱された音楽理論で、楽曲を構成する音高、音程、リズムや休符等の情報を用いて楽曲をシンボル列へと抽象化して表現する音楽理論である。また暗意実現モデルは人間があるメロディを聴いたときに意識的もしくは無意識的に後続のメロディを予測しているという仮定に基づいて構築されている。従来のメロディ生成の研究は音高の遷移確率を学習することで、ユーザーが入力したメロディに続く次の音高を決定する手法や、進化論的計算に基づき既存のメロディから逸脱を含んだメロディを生成する手法がある。これらの手法はメロディを抽象化せずにモデル化をしているため学習データに少ない音列は埋もれてしまい出力されないという問題があった。一方、メロディを適切に抽象化すれば学習データ中で出現回数が少ない音列も出力されるであろう。本稿では、この抽象化の過程にメロディを分類・分析する音楽理論の暗意実現モデルを用いる。暗意実現モデルに注目した理由は、音同士の関係を理論で定義された構造を用いて抽象化することができる点である。この理論では音同士の関係を基本類型で記述している。このような理論に基づいて抽象化された構造を用いることで出現頻度の少ない音列も出力が可能になる。

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▲メロディ生成システム

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▲暗意実現モデルに基づく分析例

論文

  • [Music Analysis] Sakurako Yazawa, Masatoshi Hamanaka: “Extension of Implication-Realization Model for Subjective Melodic Similarity”, BKN25 Milestones in Music Cognition, July 2014.
  • [PDF] [Music Analysis] Sakurako Yazawa, Masatoshi Hamanaka, Takehito Utsuro: “Melody Generation System based on a Theory of Melody Sequences”, International Conference on advanced Informatics: Concepts, Theory and Applications, pp347-352, August 2014.
  • [PDF] [Music Analysis] 矢澤櫻子, 浜中雅俊: “音楽理論に基づいたメロディ生成システム”, JSAI2014 全国人工知能学会全国大会第28回 4G1-5, May 2014
  • [LINK] [Music Analysis] 矢澤櫻子, 浜中雅俊: “主観的類似度を反映した暗意実現モデルの拡張”, 情報処理学会 音楽情報科学研究会, 2014-MUS-102, No.1, 5 pages, Feb 2014.
  • [PDF] [Music Analysis] Sakurako Yazawa, Yuhei Hasegawa, Kohei Kanamori, Masatoshi Hamanaka : “MIREX 2013 SYMBOLIC MELODIC SIMILARITY: Melodic Similarity based on Extension Implication-Realization Model “, MIREX 2013 Symbolic Melodic Similarity Results, 2013.
  • [PDF] [Music Analysis] 矢澤櫻子,寺澤洋子,平田圭二,東条敏,浜中雅俊:”暗意実現モデルにおける連鎖構造を用いたメロディ構造分析”,情報処理学会音楽情報科学研究会,2012-MUS94SLP90, No.34, February 2012.
  • [PDF] [Music Analysis] 矢澤櫻子, 寺澤洋子, 平田圭二, 東条敏, 浜中雅俊: “暗意実現モデルにおける基本類型を用いたメロディ構造分析”, 情報処理学会 音楽情報科学研究会, 2010-MUS-87, No.1, Oct 2010.